追悼。武田花さん
写真家の武田花さんが亡くなっていたことを今日知った。
花さんは武田百合子の娘さんで、彼女のエッセイによく登場していた。私は武田百合子がとても好きで、本棚には『富士日記』『犬が星見た ロシア旅行』『ことばの食卓』 『遊覧日記』『日日雑記』 に加え未収録作品集『あの頃』、そして数冊のムック本が所狭しと並んでいる。花さんは本のなかで武田百合子の目を通して生き生きと描かれている。『富士日記』に登場した花さんはまだ小学生。それから少しずつ成長し、しだいに対等に、いやそれ以上の頼れる存在になっていくのを感じながら読んでいた。
本棚から『遊覧日記』を取り出してめくってみた。ふたりの文章と写真が一つの作品になっている(余談だが花さんは猫の写真が有名だけど、私は風景写真が好き)。A先生が登場する「11京都」では最後に百合子が花さんにたしなめられている場面があって何度読んでも笑ってしまう。
もうその花さんもいなくなってしまったのか……。
毎年富士の別荘で過ごしていた武田泰淳と武田百合子がこの世を去り、花さんもいなくなってしまって、あの熱量のある豊かで野蛮な富士生活の日々が本当に終わりを告げたような気がしてどことなく寂しい。
寂しいなぁ。